「何度言っても九九が覚えられない!」という悩みを持つ子もいらっしゃると思います。やる気がないから、というようなことではなく他にも算数の文章題や、、漢字、音読、図形、様々な学習で「あれ?」と極端にできない部分があれば、それはワーキングメモリ(短期記憶)の弱い部分があるからかもしれません。
ワーキングメモリの詳しい内容はこちらをご覧ください。「勉強できないの隠れた原因ワーキングメモリ」
今回は「九九が覚えられない!」というお子様の勉強法をご紹介します。こういったお子様は言語的短期記憶(音声情報を覚える力)が弱い可能性があります。「九九」ひとつでも、覚え方の方法は暗唱だけではありません。
なぜ九九が覚えられないのか
「何度も暗唱していれば覚えるでしょう?」と思いがちですが・・・・言語的短期記憶が弱い人にとっては苦手なことです。それは、音声と数字の意味を対応させるのが難しいからです。
日本では10までの乗算を「九九」として「お経」のように言葉で丸暗記します。つまり、九九の学習は、主に言語性ワーキングメモリの働きに依存しています。
そのため、文字の読みが難しい言語性ワーキングメモリが弱いお子様には簡単な計算はできても、九九の暗記はできないということになります。
数字自体は読めるけど九九は覚えられないというお子様は「特殊読み」が原因です。九九の読み方はリズムを重視するので読みやすいように通常の数字の読み方と違います。そのため、音声を数字の意味と対応づけることができずなかなか覚えられないのです。
たとえば、「4×7=28」は「ししち にじゅうはち」と読んで覚えます。ところが、「4」は通常「よん」であり、「7」は通常「なな」と読んでいます。
九九が苦手な言語性ワーキングメモリが弱い子は「し」と「しち」に対して、それぞれ「4」「7」のことを言っているんだという対応付けが理解できないでいます。
そうなると「し」「し」「ち」「に」「じゅう」「はち」と6個の音を短期記憶に保持する必要がでてきてしまい、ワーキングメモリがいっぱいになって音声の一部が忘れられてしまうのです。
九九の覚え方を変えよう
では、どうすればいいのか?それは簡単です。「九九」の特殊読みではなく、すでに知っている数の読み方で九九を覚えるようにしましょう。たとえば、「4×7=28」なら「ししち にじゅうはち」ではなく「よん なな にじゅうはち」と読みます。
こうすると、「よん」「なな」の音声はすでに長期記憶に「4」「7」として関連付けて蓄えられているので、短期記憶のワーキングメモリの容量に余裕をもって覚えやすくなります。
九九はリズムよく発声できるように工夫されています。しかし、言語的短期記憶が小さい子はときに「しち」を「し」と聞き間違えて覚えたり、「ししち」が何と何の数字であるかが分からないまま覚えてしまったりする場合があります。
そのため、「ななよん にじゅうはち」と、数字の読みを一貫して覚えるほうが九九を正確に覚えることができるパターンが多くあります。ぜひ試してみてください。
九九を計算で活用できない
また、九九を覚える際に、数量の感覚をつかめないまま覚えているパターンもあります。たとえば「7×4=28」は「7×1=7」、「7×2=14」、「7×3=21」・・・・・とかける数を1から唱えていかないと答えにたどり着けないということです。
また、どこまでが式でどこが答えなのか分かっていないという場合も、九九は唱えられるようになったけど計算で九九を活用できないということになってしまいます。こういった場合は多感覚を利用しましょう。
九九を覚える際に数量関係を示す帯グラフを用意して、お子様に視覚的に量感覚をつかみながら九九を唱えて覚えるようにします。調べるといろんなものがあり、無料ソフトなどもあります。ぜひ、お子様にあったものを見つけてみましょう。
画像出展http://www.kennya.jp/sannsuu/99no-grap/
また、式と答えの区切りを強調するために、体全体をリズムに合わせてゆらし、答えの部分で手拍子を打つといった動きを加えると答えの部分が強調され、覚えやすくなります。
手拍子の部分を子どもの好きなポーズにしてもいいですね。このように視覚や触覚、聴覚など多感覚をつかって九九を覚えることをサポートしましょう。
九九を定着させる方法
さて、覚えることができたら応用しながら定着させていきます。これも簡単な3ステップです。仮に「7の段」をつかって解説します。
九九を定着させるステップ①並び変える
7の段の九九が1~9まで1つずつ式が書いてあるカードを小さい数から大きい数に並び替えます。
九九を定着させるステップ②マッチング
今度は「7×4=28」を「7×4=」と「28」のように、式と答えをバラバラにして、正しい組み合わせを見つけます。(マッチング)
九九を定着させるステップ③
マッチングができたら、今度は答えの数字だけを見せて、式を口頭で答えてみます。
いかがだったでしょうか?このように九九は読経のように音からだけでなく、読み方を変える・多感覚的に・定着させるアプローチがあります。ぜひ、お子様に合った方法を見つけてあげてください。
藤沢みらい塾 塾長山田勉